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株/投資/ヘッジファンド/きまぐれぽんた

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ショック 2

東京証券取引所の新興市場マザーズに8日新規上場した総合人材サービス業
ジェイコム(大阪市)の株式の大量の誤発注は、市場への信頼を根底から
揺るがせた。「61万円で1株」の売り注文を出そうとして、「1円で61万株」と
誤発注したという単純な人為的ミスが原因だが、発行済み株式総数(1万4500株)
の42倍もの注文が、なぜ通ってしまったのか。なぜ、売買が成立してしまったのか。
そして今後の“後始末”はどうなるのかを探った。

東証での誤発注は過去にもあった。01年11月30日に欧州系証券会社が、東証1部に
上場した広告代理店、電通株を「1株61万円で16株」とすべきなのに「1株16円で
61万株」と注文して一部売買が成立し、即座に買い戻しを余儀なくされたことがある。
ドイツ証券も直後の12月3日に「いすゞ自動車株9万株売り」を「9000万株売り」と
誤発注したが、取引時間終了間際だったため、売買が成立しなかった。

人為的ミスに加え、コンピューターの警告を見落とした点で、この電通の件とみずほは共通
している。今回、8日午前9時に新規上場したジェイコム株は、同27分に初値67万
2000円をつけた。同じころ、みずほ証券は顧客から「ジェイコム株を61万円で
1株売り」の注文を受けたが、担当社員は「1円で61万株売り」と金額と株数を
逆に入力、端末の警告も見落とした。大量の売りを受け株価は値幅制限
いっぱい(ストップ安)の57万2000円に急落した。約1分半後、近くにいた別の
社員が警告に気づいた。担当社員は取り消し作業を3回行ったが、その時点の
価格で入力しなければならないのに、元の「1円」のまま取り消そうとし続けて
失敗、傷口を広げた。結局、みずほは買い戻しを始めたが、約13万株は買い
戻せずに残ったとみられる。

電通の場合は、誤発注した株数が電通株の発行済み株式の範囲内で、買い
戻せた。だが、みずほの誤発注は発行済み株式の42倍にもなり、電通の時の
ように買い戻し切れなかった。

今回の原因は、人間の失敗(ヒューマン・エラー)の連鎖だが、失敗を前提に、
事後の対応を想定して被害を最小限に食い止める「フェイル・セーフ」の発想が
東証と証券会社になかったことが、事態を拡大した。

みずほが誤発注に気付いたころ、東証も異常事態を察知し、みずほに電話を
3回入れて対応を求めたが、みずほ側が「注文取り消し作業中」と返答するのを
聞き置くだけ。東証のシステムでは誤発注の具体的な内容が把握できない。発行
済み株式数を超える今回のような異常な注文を自動的に拒否する“安全装置”も
なかった。

9日未明の会見で東証は、対応に問題はなかったと説明した。だが、電話で、
みずほに具体的な内容を問いただしておらず、そうしていれば、この時点で
ジェイコム株を売買停止にするといった選択肢もあったはずだ。システムの欠陥、
人的対応の甘さの両面で、大きな落とし穴が露呈した。

みずほ証券の福田真社長は8日の会見で「誤って出した売り注文61万株については、
売った先から市場でほとんど買い戻せた」と強調した。しかし、引き続き開かれた
東証の会見で天野富夫常務が「大きな影響のある数だと認識している」と発言
するなど食い違いを見せており、市場では13万株(2割)程度が買い残しとみられている。

株式は購入から4営業日目に受け渡す。みずほは今回、現物を持たずに「空売り」
した形で、買い戻せなかった分も13日に投資家に株券を渡さなければならない。
みずほはジェイコム株を保有する投資家から株を買って手当てする必要があるが、
ジェイコム株を持っている株主は、みずほが買いたがっているのが分かっている
から、値上がりを期待して売り控えるのは確実。このため、引き渡しができない
場合は株券の代わりに現金で支払うなど、なんらかの特別措置が必要になりそうだ。


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